がみにっき

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数字に悪口を言う

「漫画家さん?なにか描いてるの?」

以前、漫画家のアシスタントをやっていたとき、他のアシさんにそう聞かれた。

 

そこは結構有名な先生の現場で、わたしは知り合いのツテで紹介して頂き、少しだけ働いていました。でもそのときは漫画家になりたいとは思っておらず、他になりたい職業もありませんでした。漫画は小学校から高校までで細々とコピー用紙の裏に描いてたくらいで、経験もなかった。だからうまく返事できなくて、昔ちょっとだけ…とか言ってそのときは誤魔化してました。お前なんでここにいるんだよ!と思われても仕方ないんだけど、その時はなんとなく変わった仕事をしてみたかったし、絵もそこそこ描けたので力になれるだろうと甘い見通しで入りました。当然、すぐバレた。漫画業というのは熱意を見られる世界だ。でもなぜ、熱意もないのに漫画家のアシスタントをしようと思ったのか。

 

今思うと、言いたいことを言える人になりたかったんだと思う。昔から堂々としてる人に憧れがあった。私は運動神経が悪かったので学校では主に日陰者でした。生徒会長よりもバスケ部のウェーイの方が発言力がある環境では、なにかを表立っていう機会はあまり無かった。そのため、鬱憤を貯めながら大人になった。自主性を求められる大学時代も、プレゼンではボロクソだし就活時期は自己開示がうまくできなかった。だから、売れっ子の漫画家になれば言いたいことが言えるのでは?と考えたんだと思う。

 

ズバズバ言える人は魂が太い。自信があるか、人間性を欠いているかしないと人にズバズバ言うのは難しい。指摘には反撃のリスクがある。正しくても喜ばれないし、嘘は最低。言い回しのバランスを考えないと、言う側も言われる側も火傷する。悪口はかなりセンスのいる技術なのだ。わたしは物言いが激しいので、すぐ人をウッとさせる。でも言わずにいるのもストレスが溜まる。どうにかして反撃を食らわずになにかをボコボコにできないものか…

 

思えば、私は数学が苦手だった。計算式を見ると思考がストップする。百ます計算は毎度ビリ争いしていたので、こんな拷問を小学生に課すのはあんまりじゃないかと思っていた。狭い檻に閉じ込められ、左脳を使わされて、憎い。考えれば考えるほど、数字に腹立ってきた。なぜお前たちは世界の全てを知ってるかのような顔しているのだ。文字のくせに、それぞれにアイデンティティがあるのも生意気だ。数なんて、人間に生み出された概念でしかないのに。元々世界にありました〜みたいなスタンスで、あまつさえ人間を操ろうとしている。そうだ。こうなれば、数字をケチョンケチョンに批判してやろう。

 

というわけで、今日は数字に日頃の思いの丈をぶつけたいと思います。悪くいうだけではつまらないので、批評っぽくしてみるね。ちょうど数字の皆様も揃ったようですし、さっそく始めていきたいと思います。これが地獄の始まりとも知らずに…

 

 

"トップバッター!スピードなら誰にも負けない!ソリッドフォルムが唸りを上げる!できれば独りにしておいてくれ!数字の〜ォ『1』"

 

勢いよく登場してきました。数字の1ですね。熱意だけは評価しますが、やはり空回りというかなんというか。空気読めてないんですよね。周りの温度感を察せないとやっぱり疎まれちゃうんじゃないかな。ご自慢のフォルムとやらも、ソリッドと言うよりは無骨で、もはや昭和の頑固オヤジって感じでしょうか。聞く耳持たなそうなやつにはなにも言いたくなくなります。毎回1番目に発表しなきゃいけないひらがな「あ」行の皆さんのように、辛いポジションかもしれませんが、これからは柔和な感性を培ってしなやかに動けるようにしていってほしいですね。次の方。

 

"セカンド!永遠の二番手とは呼ばないで!おでんで言えばこんにゃくポジション!頭でっかちの白鳥ボディは水面下ではバタつくぜ!数字の〜ォ『2』"

 

さぁ、続いてやってきたのは数字の2ですね。やっぱり、ボディのアンバランスさが目立ちます。上半身と下半身を繋ぐキュッとした部分に埃とか溜まってそうで、拭いてほしい。全体的になにかを引っ掛けられそうで、じゃあなにを引っ掛けるんだという印象。いまいちボヤけており、主体性というのが感じられない。名脇役としては居場所があるのではないでしょうか。メジャーになれないゆえの葛藤を抱えていそうですが、サブカルチャーは若者には人気があります。控えめだけどその実目立ちたがり屋ってのは伝わってきますので、バンドとか組んでベース弾いたら?次の方。

 

"サード!魅惑のお尻ライン!見た目も中身も一癖ある奇数界のエメラルド!片側だけに詰まった野望は天下統一三文芝居!数字の〜ォ『3』"

 

中間を担うは3ですね。まずパッと見、痒いところに手が届かないって感じ。なにが宜しくないのか…やはり余りにもお尻っぽすぎることが原因でしょうか。他の数字と並べた時に、下の出っ張りがはみ出ちゃうんですよね。一人だけ尻もちついているように見えるし。整列の時くらいはシャキッとして欲しいです。しかし、その奇異さは評価に値します。色々とツッコミどころがあるので、お笑いのボケとしては重宝されるのではないでしょうか。もう少し図々しさを身につければ、目は引くのでどこかにチャンスはあるかなと。今後に期待で星三つです。次の方。

 

"フォース!深淵からの呼び声!招きいづるは紫の化身!紋章のようなその体躯には太古の人々の願いが宿る!数字の〜ォ『4』"

 

4ですね。マンションの号室から消されたり、車のナンバーで避けられたりしてる彼。同情してあげたいところですがやっぱり暗い。それにしても忌み字として圧倒的に不利な状況なのに、なぜか余裕なところはなんなのか。厨二病なんでしょうか。教室の隅で一人ほくそ笑む姿は青春の一ページを切り取ったかのようです。ただ、家で集まった時にちょうどいい人数ってところは評価できます。ゲームキューブ、64は四人で集まると最高。その性質を活かして、遊び人キャラになればマイナスイメージを払拭できて良いのではないでしょうか。元陰キャって明るい人多いし。次の方。

 

"フィフス!数字界一の頭脳派!キレる頭でビクともしない質量最多のコバルトブルー!クールな瞳に映すのは明日か未来か!数字の〜ォ『5』"

 

5は、頭脳キャラで来ましたか。たしかにキリのいい感じはするし、どことなくスマートぶってる様相もあります。しかし、面白みがないんですよね。自分の殻を破れていないというか。演技の幅がない俳優はそのうち消えます。今のうちに軌道修正して、少し肩の荷を下ろさないと観てる側も本人も気を遣いあって何も言えない雰囲気になっちゃうんじゃないかな。意外性というのは侮れないものです。その辺は3とかを見習って、ポップにね。みんな普段の5君の姿を見たいって思ってるんじゃないかな。次の方。

 

"スィクスス!謎めいたその魅力!悪魔の数字と呼ばれてもめげません!地獄の底の蓋が開く時!中に見えるは黄金の回転軸!数字の〜ォ『6』"

 

6ですね。たしかに、666とかイルミナティとかの厄介そうなイメージはどことなくインパクトがあります。でもクドい。なんでも欲張ればいいってものじゃなくて、コレと決めたら一本でやり切ってみるとかさ。あれもこれもと手を出すと散漫になって終わります。あと都市伝説系で持ってくるのは小狡い感じがする。ここは身一本で勝負して欲しかったところ。そういえば、体つきはなんとなく素敵ですね。フィボナッチ数列的。スケートとかピアノとかの小綺麗な趣味も案外似合いそうだし、そういうのやってみたら?次の方。

 

"セブンス!ラブリーキュート!撫でるような自慢のボディにファンクラブもできたとか!夜な夜な自撮りが止まりません!みんなの嫉妬は人気の証!数字の〜ォ『7』"

 

7はアイドルですか。アイドルはもう食傷気味なんですよね。だってもう、飽和してません?キャラ立とうとしても結局どんぐりの背比べ。少なからずファンもいるようですが、身体的魅力だけでは目先の数字しか上げられないのかなと。スピリチュアル関係の方には熱烈な方がいらっしゃるので、そちらに視野を広げてみてもいいのでは?あと言おうと思ったんですが、1君となんか似てません?…えっお姉さんなんですか?!あっそうだったんですね、仲睦まじいですね〜。次の方。

 

"エイトス!左右非対称!転んでもただでは起きないダークブラウンの風雲児!とある部族では神の数字と崇められたそう!均整の取れた体は努力の証!数字の〜ォ『8』"

 

8ですね。そろそろ疲れてきました。見た目は、まぁまぁいいんじゃないですか?私は好きですよ。メビウスの輪って感じで印象的だし。でもなんかなぁ〜。内なる自信があるのはわかるが、ちょっとマッチョすぎかな。毎週ジム通ってるでしょ。健康的でいいけど、精神面はニーチェのようなシニカル&アイロニカルを抱えてて欲しいですね。君はもっと影のある魅力を身につけたらいいと思う。本とか読んだら?大人の魅力が増すと思うよ。次の方。

 

"ナインス!難波の関西弁!落としがいのある頭部は非常時には武器になる!「舐めたらあかんで」と逆立つ気迫は乙女の抒情!真紅のブラッドレディ!数字の〜ォ『9』"

 

あ、次でラストなんですね承知です。じゃ、パパッと終わらせるんで。9ちゃんは、わかった!4君とユニット組もう!チーム名は『4ックハッ9ず』で!現代社会の嘆きつらみをラップ調にして、仏教ベースの音楽に乗せて歌おう!プロデュースはこっちでやっとくから、とりあえず向こう一年はその活動に専念してもらって、最終的には君のやりたい関西弁で政治をポップに叩っ斬るサブリミナル鎮魂歌をやろう!今やると燃えちゃうから!色々とまずいから、ね!実力つけてからやろうね!!じゃ次、最後の方〜!

 

コツ……………コツ……………

 

(あー、ようやく終わる。長かった。最後の方自分でも何いってんのかよく分かんなかった。見切り発車な企画はやるもんじゃないね。批評する側も疲れるんだな。色々と学んだわ〜。)

 

コツ………コツ………

 

(でもなんだかんだいいオーディションだったな。今までのメンツも、アレコレ言いはしたもののキャラは立ってたし。磨けば光るとこありそう。とりあえず、5君と3君は凸凹コンビだから行けそうとして、問題は2君と6君だな…2の方はとにかく地味。6は自己主張が激しすぎる。テレビでは不思議ちゃんは扱いにくい。しかし、2は女子受けしそうだからモデルとしては行けそう。6も身体的魅力を活かして、グラビアの方向でなんとか持っていけないものか…)

 

コツ…コツ…

 

(8君は、そもそもルックスがいいからあとは知性だけ身につけて貰えば人気は出るだろう。1君と7ちゃんは姉弟だし、話題性は十分。あとは独特の喋りのくせをなんとかさせれば、お互いのいいところを補ってやっていってくれそうだ。よし、全員なんらかの方向で活躍の場は設けられそう。こういうのがプロデュース業をやっていく醍醐味なんだよな。それにしても、最後のやつが遅い。やる気あるのか?)

 

コンコン

 

(おっ、ようやく来たか。いくらなんでも待たせすぎだ。こちとらこんな記事早く書き終えてYouTube観たいんだよ。まぁいい。どれどれ…ん?そういえば、最後のやつって…)

 

 

「失礼します。」

 

 

 

 

 

 

 

扉から現れた彼を見た時、わたしはずっとこの時を待っていたんじゃないかと思った。噂には聞いていた、インドから来た天才がいると。数字界最年少にて、全ての学問の歴史を塗り替えた記録を持つ。我々が今使うiPhoneなどの電子媒体も全て彼がいなければ成り立たなかっただろう。その見た目も実に鮮やかだ。どこにも切れ目がなく、最もシンプル。空間を抜き取ったような彼の輪郭の中には、これまで私が生きていた過去、現在、未来が全て集約されているのではないだろうか。そんなことまで思うほど、そこにはオリジナルが存在していた。圧倒的な個性に対して人はひれ伏すしかない。そんな直感で、本能的に私は恐怖していた。今までのオーディション、そしてこれからの世界が、彼によって塗り替えられてしまうのではないかと。バカな、そんなこと…。ふと、彼の姿に目を奪われていた私は思い出す。そうだ、彼の名は…

 

 

 

 

--"数字の0は、永遠の0。有限とはどこまで在るのだろうか。水には在るか。記憶には。そして、時間には。私は0も好きだが、別に他の数字も好きです。形だけ見たらみんなかわいいし。なんでこんな記事を書いたかって?知りません。思いついただけです。私はストレスが溜まっているんだ!とりあえずなにかにケチつけたいんだ!!!!"--

 

ほんとすみませんでした。