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ナイモンにおける「女っぽいやつ無理」とは現代のゴルゴダの丘なのか

突然ですけど、皆さんはナイモンを知っていますか?

 

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これ。

 

ピンクの文字で、一見おしゃれなパズルゲームみたいに見えますね。しかしこれ、ガッツリ出会いアプリです。

 

ゲイの世界ではすごく有名なアプリで、これさえあれば近くにいるゲイが、まるで魚雷を索敵するかのごとく自動的にあぶり出されるという代物。マッピング機能が付いていて、自分の現在地から隣のゲイまでどれくらいの距離なのか、親切に教えてくれます。カミングアウトしてなくてもゲイと繋がれる、ある意味恐ろしいツールです。

 

有名になりすぎて、ゲイの社交界ではほとんど名刺代わりのように使われています。一部のノンケにも知られてしまったせいかアウティングの危険があり、顔写真を伏せる方も出ている始末。ノンケの方は、興味本位で知り合いがいるか気になっても、なるべくそっとしてあげてくださいね。ウチらが徒党組んだら一発だかんね。

 

このピンクローターみたいな色したエッチ・コミュニケーション・ツールが、ゲイの世界でどれほどの影響を与えたかについては、先人のゲイブロガーさん達が色々書いてくださっているので割愛します。今日言いたいのは、ノンケに向けたゲイの紹介ではなく、どちらかというとゲイのみんなピに向けた、共感してほしいフェチズムの話になります。

 

出会いアプリなんてぶっちゃけ顔写真がほとんど全てなんですが(身もふたもない)、ギリギリ顔以外にも人となりを判断できる部分がありまして、それが自己紹介プロフィールです。

 

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長く丁寧に書くか、短くポップにまとめるか、その人の感性が試される場所。顔写真が力士なら、プロフィールは土俵。

 

私なんかは、顔写真だけでなくしっかりプロフィールもチェックして、なんならチャットの相性とかまで加味して、総合点でリアルするかどうかを決めたりする結構な陰キャです。適当に会ってみるとかできない。文体とかがちょっとでも陽の氣をおびていると、顔がタイプでも会えなかったりするんです。例えばプロフィール欄によくある一文で

 

"スポーツやってます!良かったら絡みましょー"

 

さわやかで、とてもいいですね。余計な顔文字とか無いのも、そういう細かいところは気にしねえってばよ!と言わんばかりの、少年ジャンプの風来坊のような雰囲気を醸しています。しかし、ダメなんです。真っ直ぐな伸ばし棒、これを語尾につけられるのは本田圭佑のような背筋の伸びたスポメン、つまりワールドカップ日本代表くらいなものです。スポーツマンのさわやかな風はこじらせ乙女には暴風すぎて、心のささくれた部分がヒリヒリします。一気に高校時代の運動祭で気配の消し方を悩みめいていたあの頃の自分に逆戻りさせられます。あなたに罪はありません、わたしが自我形成で色々ありすぎたことに罪があるのです。

 

また、長文でよくあるのが

 

"こんにちは😃地方住み、旅行好き✈️で、エッチなことも大好きなおじさんです‼️顔は悪く言われません。普段はノンケ生活の管理職(≧∇≦) 溜まっております(笑)ので、どなたか手合わせ頂けるイケメンさんを募集しています(^^)  相方います‼️現在は遠距離。今ではお互いをよく思い、信頼をおける間柄となれました。長時間楽しめる、若い子には、たくさん足跡つけちゃいます😊❤️あしからず"

 

よくあるおじさんの厳しめ文体ですね。しかし、ゲイの世界ではひと味違います。まず、顔は悪く言われませんの部分。顔を出さず綺麗な海の風景をアイコンにする人の中に、死後極楽へいける人はいないと言われています(首から下だけの写真や、やたらと顔付近がぼやけた写真も含む)。また、恋人のことを相方という呼称方法。これはゲイの世界ではよく見かける現象で、タチとネコに分かれるゲイカップルの性質と、お笑いのボケツッコミの役割分担に親和性があったからという説と、マイノリティゆえに処世術として照れ隠しが必要になり、丁度よくノンケ生活(笑)の隠れ蓑として機能して定着したという説があり、この二つが私の中で主流です。普通に彼氏と呼べ。そして聞いても無いのに現在の相方との関係性を説明するところ。おめでとう。君たちの歩んできた今までは、全てこれからの為にあったんだよね。ありがとう。ほんとうに、出会う気あるのか?こういうおじさんはもれなく若い子にしか興味ないし、なぜかエッチであることがアピールポイントだと思っている。年長者はまず知性を示せ。

 

他にも、思わずウッとなる文章なども散見されます。

 

"女っぽいやつ無理"

"太ってるやつ話しかけてくんな"

"顔写真ない方からの足跡は即ブロック"

 

これら、三種の神器と呼ばれる古来から伝わるヘイトアピールは、その昔、時の権力者を引きづり落とすために、臣下たちが呪法として用いていたまじない言葉だと記録されています。こんなこと書いたらただのヤなやつじゃない?そりゃ私だって嫌いなポイントの1つや2つあるけどさ。口臭とか嘘つく人とかは嫌だけどさ。でもプロフに書かなくてよくない?そうかもって思ったら、あなたにはその人をスルーしたり、ブロックする権利だってある。せっかくあなたがタイプですと言ってくれる人の言葉を、タイプ外だからといって煙たがることはないと思うんです。もしそれがものすごいキモい言い回しだったとしたら、友達とかに話して笑いにすればいいんだし。あれ、わたし今酷いこと言った?

 

今まで紹介したアレなプロフの中でも、特に"女っぽいやつ無理"は根深い問題と思っていて、それは私がめめしさを凝縮した頑固こじらせゲイだからだとか、そういうことだけではないと思うんです。

 

思い出してください。みんなが体を鍛え出した、最初のキッカケは自分の中の女性らしさへの抵抗だったでしょう?

 

少しでもオスらしく、えちえちワガママバディになるために、したくもない筋トレをしたり、涙流しながら断髪したり、日サロで若作りしたり。

 

その苦痛と戦って、栄光を手に入れた人もいれば、別の道を探して内省し、鋭い批評性を手に入れた人もいる。中には自分をしっかり持って、競争なんてしなくてもスイスイと生きていけてる人もいるかもしれない。

 

間口は、広い方がいいと思うんです。狭めても許されるのは、ガチ天上人って感じの一部のグッド・ルッキング・ガイだけと思うし、そのような方は自分の品位をわざわざ落とすようなことはしなくても人が集まるので、そもそもアプリなんてする必要がないです。ごめん泣いていい?

 

でもね、わかる。わかるよ。書きたいんだよね。きっとこういうのを書いている方は、努力してジムとか行ってて、それなのになんの努力もしてなさそうな人がヘラヘラしてるのが許せなかったりするんだよね。その気持ち、アタシはわかる。なんか頑張っちゃうとさ、空回りしちゃって、うまくいかないんだよね。アタシなんていっつもそうだよ。アンタも、きっと今そういう人生の側溝に、片足を引っ掛けちまったとこなんだろ?目、みればわかるよ…(ショットグラスがカランと鳴る)

 

タイトルのゴルゴダの丘というのは、なんとなく思いついただけで、あんまり意味なかったです。意味をつけるとすれば、そうですね。

 

−−−"磔刑にされたキリストの遺体を丘の上まで運ぶ人間の姿。人の業とはいつの時代も重く、それはアプリでも変わらない。私たちは迷い、傷つけ合い、時に女々しさを排除する。そのことに意味はあるのだろうか。ゲイである私たちの中には、キリストの手のひらから流れる血のように赤黒いメスの感情が流れていて、それはゴルゴダの丘からみえる真っ青な空と対比して、酷く美しくみえた"−−−

 

こんな感じでいいですか?