がみにっき

しゃべるねこ

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2021-01-01から1年間の記事一覧

就活失敗したゲイだけど死なずに生きてる 18

「皆さんには黙っていましたが、私はゲイです。」 大学の工芸棟への続く広い通路を横断するように、生徒たちは列を作り、地べたに座り、私の言うことに耳を傾けていた。私を中心として波状に整列する様子は、真上から見たらまるで鉄球に吸い付く砂鉄のように…

就活失敗したゲイだけど死なずに生きてる 17

大学3年の6月。梅雨に差し掛かり、校舎にも薄紫や青色の花が咲き始めた頃。私たちは『紫陽花』という名前の他専攻を交えた飲み会に参加していた。 『紫陽花』は、デザイン科3専攻だけではなく、工芸や彫刻といったファインアートの学生も参加できる。土曜の…

就活失敗したゲイだけど死なずに生きてる 16

『アイデンティティ・ボックス』直訳で自分らしさの箱。私の大学で、3年次の最初に言い渡される課題だ。 自分らしさをテーマに作品を作る。タイトルに箱とは付いているが、別に箱にしなくてもいい。メディアも自由で、形状・大きさも自由。とにかくなんでも…

就活失敗したゲイだけど死なずに生きてる 15

土曜日。私はボンちゃんとの約束通り、20時にお店に着くように向かった。大学近くの下宿から、徒歩30分で着く繁華街。途中坂道があるので帰りは少し辛いが、徒歩で向かわなければ行けないのは冬のシーズンだけだろう。雪が無くなれば自転車を使えるので、慣…

就活失敗したゲイだけど死なずに生きてる 14

大学2年の冬。この季節、私の下宿がある地域ではかなりの雪が積もる。窓の四隅から漏れる空気が、部屋全体を凍らせる。底冷えするような寒さと地元では表現する。足元からくる冷えは、いくら暖房をつけていようとじわじわと部屋全体を寒さで飲み込んでいく。…

就活失敗したゲイだけど死なずに生きてる 13

お母さんの子になんて生まれなきゃ良かった。 RADWIMPSが出した『五月の蝿』という曲の一節だ。 私は高校時代ずっとRADWIMPSを聴いていたのだが、ちょうど大学生の頃にリリースされたこの曲を聴いて、私は当時の行き違いの果ての亀裂を、悔い、病んでいた。…

就活失敗したゲイだけど死なずに生きてる 12

「お願いがあります。」 私は薄暗い部屋の中で、私はベッドに仰向けになりながら電話を掛けていた。相手は、バイト先の店長だ。 「お願いって?」 店長が聞き返す。私は勇気を振り絞って、言った。 「バイトのことなんですけど、辞めさせていただけないでし…

就活失敗したゲイだけど死なずに生きてる 11

「おい、生きてるか?」 私のパソコンに、メッセージが届いた。誰だ、わざわざわかり切ったこと聞いてくるやつは。私は今死んでるところなんだ。ムカついて、既読をつける前にたんまり時間を掛けてから、死体は返事をした。 「死んでる。」 「だと思った(笑…